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読点マジック

time 2013/05/06

読点マジック

 

ウェブサイトの新着ページなどで、短い文章で情報を伝えるということが、しばしばあります。

 

そのウェブサイトの文章(日本語)を英語に翻訳する際には、原文である日本語を正しく理解する必要があります。

 

押さえるべきポイントは複数ありますが、中でも興味深いのは、読点(、)の位置ひとつで、文章の意味がかなり変わってしまうという点です。

 

たとえば、下記の一文。

 

—–

私は、この赤いバラと少女の絵が好きです。

—–

 

この文章。はたして「私」が好きなものは、文中にいくつ登場しているでしょうか?

答えは「ひとつ」とも取れますし、「ふたつ」とも取れます。

 

では、下記の一文。

 

—–

私は、この赤いバラと、少女の絵が好きです。

—–

 

こちらだと、「私」の好きなものは、いくつ登場しているでしょう?

答えは「ふたつ」です。

 

 

この文章において重要なのは、『絵』に何が描かれているかです。

 

前者の場合だと、『絵』には「赤いバラ」と「少女」が描かれているように捉えられますが、同時に、「少女」だけが描かれていて、「赤いバラ」は「私」が手にしている『本物の花』であるようにも捉えられます。

 

後者の場合では、「赤いバラ」と「少女」が読点(、)によって区切られているので、ふたつはそれぞれ別々のもの。「赤いバラ」は『本物の花』で、「少女」だけが『絵』に描かれていると捉えることができます。

 

つまり、「赤いバラと」のあとの読点(、)の有無によって、この「赤いバラ」が『本物の花』になるのか、それとも『絵』になってしまうのかが決まるのです。

 

 

読点(、)ひとつの違いでこんなにも意味が変わってしまいます。実に面白い!

 

 

実際の翻訳では、事前に、または事後的に、依頼者様の背景などについて細かにお伺いしますので、「赤いバラ」が『本物』なのか『絵』なのかは判別が可能です。

 

しかし、上記の一文だけですと、なかなか判断に迷ってしまいますね。

 

 

パッと見、間違えてしまいそうなこの違い。

実は、この手のちょっとした表現の違いで意味が変わるという捉え方は、各種の契約書や約款、NDA(秘密保持契約)などの書面では、より重要性が高くなります。

よくよく読んでおかないと、あとで「あれ?!思っていたのと違う(汗)」というふうになりかねません。

 

よくある表現としては、

 

A、その他BC

これは、Aがひとつのグループ、BCがもうひとつのグループということを表しています。

 

Aその他BC

こちらは、A、B、Cすべてが同じひとつのグループに属しています。

 

AとB

この表現だと、前後の文脈を見てみないと、AとBの両方を指しているのか、AあるいはBどちらかを指しているのか、判別がつきません。

 

どれもなかなか難しいですね。

 

しかし、読点(、)によってグループ分けを率直に表すことができる、ということを理解していれば、『本物の花』を『絵』の中の創作物として誤認することもありませんし、はたまた『絵』の中にしか存在しないものを現実のものだと勘違いすることも少なくなります。

 

いずれにせよ、書き手の指一本、小さな動作ひとつで、文章の中に登場するものたちは、本物にも、絵にも、なり得てしまうというのは、とても大切で、面白いことだと思います。

 

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